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ご相談事例CASE

祖父の財産を相続放棄できるか?(再転相続の財産の顕在化)

事例概要

祖父の死後20年経過し父の死後5年経過しているところ、祖父名義の古い建物が相続財産であることが判明、孫が再転相続人として相続放棄申述をして受理された事例

ご相談内容

国有地を借地として祖父名義の古い建物があったが、祖父の生前から第三者へ建物を賃貸しており借地料は賃借人である第三者が支払っていたところ、最近になり賃借人が相続人がないまま死亡した。

国有地管理者から祖父の孫(ご相談者様)がこの建物の相続人として承継又は撤去を求め連絡を受けた。

祖父の子供は既に全員死亡しており、孫である相談者様はこのような建物を祖父が所有しているを知らず、また賃貸していることも知らなかった。

建物を承継する気もなく、取り壊して原状回復ののちに借地を返還するにも費用が掛かるため相続放棄をすることができないかとの相談。

当事務所で行った実施内容

ご相談者様に代わり行政から詳細の聞き取り調査を行い、各方面から善後策を検討したところ、やはり相続放棄を行うのが最適解であるとの判断であったため、管轄の家庭裁判所書記官と打ち合わせの上、再転相続人から相続放棄申述を行い無事に受理されました。

本事例のポイント

(1)再転相続人の相続放棄

aが死亡して相続が開始し、aの相続人であるbがaの相続について承認も放棄もする前に死亡し、bの相続人cがいる場合を再転相続といいます。

再転相続につき判例は、「cがbの相続につき放棄していないときは、aの相続につき放棄をすることができ、かつ、aの相続につき放棄をしてもそれによってはbの相続につき承認又は放棄をするのになんら障害にならず、また、その後にcがbの相続につき放棄をしてもcが先に再転相続人たる地位に基づいてaの相続につきした放棄の効力が遡って無効になるものではない。(最判s63.6.21)」としております。

本件では相談者様が父の相続を単純承認しているところ、祖父の相続を承認又は放棄の選択ができるのかということで相続放棄の選択をしました。

(2)相続放棄の熟慮期間

相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない(民915Ⅰ本文)とされており、この期間に相続人はいずれかを選択するために相続財産の調査を行い、この期間内に選択をしなかった場合には単純承認をしたものと見做されます。(民921)

この、「自己のために相続の開始があったことを知った日」の起算日についてどのように考えるのか。

前出の判例では、「再転相続の場合aの相続につき、その相続人であるbが相続の承認又は放棄をしないで死亡した場合には、bの相続人cは再転相続人の地位そのものに基づいて、aの相続とbの相続のそれぞれにつき承認又は放棄の選択に関して格別の熟慮できる」としており、本件では、祖父の死後20年以上経過しているにもかかわらず相続放棄を選択し認められました。