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なぜ、相続登記を義務にしていくのでしょうか
1. 所有者不明土地・建物の増加問題とその原因
不動産の所有者が亡くなった後、その相続人が名義変更の登記(相続登記)をしないまま放置すると、登記事項証明書上の所有者は亡くなった方のままになります。この状態が何世代にもわたって続くと、相続人の数はどんどん増えていき(これを「数次相続」といいます)、数十人から百人以上に膨れ上がることもあります。
こうなると、いざ相続登記をしようにも、現在の相続人全員を探し出して協力を得ることは極めて困難になります。その結果、登記事項証明書を見ても現在の本当の所有者が誰なのか分からず、連絡先も不明な「所有者不明土地・建物」が生じてきました。
なぜ登記が放置されたのか?
- 義務ではなかった:2024年4月まで相続登記は任意であり、後回しにされがちでした。
- 費用と手間:登記には登録免許税や司法書士への報酬がかかり、戸籍謄本などの書類収集にも手間がかかります。
- 資産価値の低い不動産:地方の山林や原野、古い家屋など、売却も活用も難しい不動産は、費用をかけてまで相続登記をするメリットを相続人が感じにくく、放置される原因となっていたようです。
この問題の深刻さを示すデータとして、2016年の国土交通省の調査では、所有者不明土地の総面積は約410万ヘクタールと推計されており、これは九州本島の面積(約367万ヘクタール)を上回る規模です。
2. 公共事業や災害復旧への妨げ
所有者不明土地は、国や自治体が進める公共事業や、災害からの復旧において深刻な障害となります。
- 公共事業への影響 道路の拡幅、新しい学校や公共施設の建設、河川の改修工事などを行うには、その土地を国や自治体が買収する必要があります。しかし、土地の所有者が不明だと、用地買収の交渉相手を探すところから始めるため、速やかに事業を開始できません。 行政は戸籍を遡って相続人を一人ひとり探し出す必要があり、これには膨大な時間と費用がかかります。相続人が見つかっても、全員の同意を取り付けるのは難しく、結果として事業が大幅に遅れたり、計画そのものが中止に追い込まれたりするケースもあったようです。
- 災害復旧への影響 この問題は、災害時にさらに深刻化します。例えば、東日本大震災や熊本地震では、被災地の高台移転や防災林の整備といった復興事業を進めるにあたり、多くの所有者不明土地が障壁となったといわれております。 一刻も早い復旧が求められる中、現在の所有者の探索に時間が費やされ、復興のスピードを著しく妨げたようです。
3. 民間取引や地域社会への悪影響
所有者不明の問題は、私たちの日常生活や経済活動にも直接的な影響を及ぼします。
- 民間取引の阻害
- 不動産売買の障害:自分の土地を売りたくても、隣の土地が所有者不明だと、土地の境界を確定できず、売却時の障害となることがあります。
- 再開発の停滞:都市部の再開発プロジェクトを進める際、区域内に一筆でも所有者不明地があると、権利者全員の合意が得られないため、街づくり全体がストップしてしまいます。
- 周辺環境・安全への脅威 所有者がいない土地や建物は、当然ながら管理されません。その結果、以下のような問題が発生します。
- 空き家の倒壊リスク:管理されない空き家は老朽化が進み、倒壊の危険性が高まります。
- 環境悪化:土地には雑草が生い茂り、害虫が発生したり、ゴミの不法投棄場所になったりします。
- 治安の悪化:放置された建物が犯罪の温床になる可能性もあるといわれております。
これらの問題に対し、自治体が危険な空き家を強制的に撤去しようにも(行政代執行)、その費用は所有者に請求するのが原則です。所有者が見つからなければ費用を回収できず、対策が後手に回ってしまうのです。
このように、相続登記の放置は、個人の問題にとどまらず、社会全体の安全や経済活動を停滞させる深刻な問題です。今回の相続登記義務化は、こうした事態を防ぎ、将来にわたって土地や建物を適切に管理・活用できる社会を維持するために、不可欠な措置と考えられております。

